『TIME』誌に寄せられた近藤麻理恵の「2019年予測」。-「Greater shift toward mindfulness in the culture」(Marie Kondo)。 / by Jun Nakajima

雑誌『TIME』(January 14, 2019)の記事(「The Brief: Year Ahead」)のなかで、影響力のある人たちが、2019年におこるだろうと予測する「大きな変動・変化」について語っている。

そのなかのひとりに、近藤麻理恵がいる。

『人生がときめく片づけの魔法』の著書で知られる近藤麻理恵。Netflixのリアリティ番組『Tidying Up With Marie Kondo』が配信されはじめ、またアメリカを中心に活動がさらにひろがりを見せているが、その近藤麻理恵が、上記の記事で、「We’ll take a mindful approach to our phones」(By Marie Kondo)という短い文章を寄せている。


In 2019, I believe that there will be a greater shift toward mindfulness in the culture. …People are starting to realize that happiness isn’t something that you achieve from the outside - through technology or the newest fad - but, rather, from within. I predict people will tune in to their inner voices and identify what sparks joy in all aspects of their lives, from their homes to their work and relationships. …

「We’ll take a mindful approach to our phones」(By Marie Kondo)『TIME』(January 14, 2019)


「2019年、この文化のなかで、マインドフルネスに向けて大きなシフトがおこると、私は信じています。…ハッピネスが、テクノロジーや新しい流行モノなど自分の外側から達成されるものではなく、むしろ、自分の内側から達成するものであることを、人びとは理解しはじめるのです。人びとは自分の内面の声に耳をかたむけ、家から仕事や人間関係にいたる、生活のあらゆる側面において、ときめきを与えてくれるものを判断するようになると、私は予測しています。…」

このようなメッセージを、近藤麻理恵は『TIME』誌に寄せている。


その他寄せられている文章のタイトルを拾うと、「The divided U.S. government will unite」「More companies will combine - or vanish」「Non-Russia scandals will grab our attention」「Genetic science will face greater control」「Behind-the-scenes diversity will bloom」と続いている。

こんななかにあって、近藤麻理恵のメッセージは、文章のタイトルこそ「We’ll take a mindful approach to our phones」というように「携帯電話」の使用の仕方にふれる形で他の記事とバランスを取ろうとしているが、「マインドフルネス」や「ハッピネス(幸せ)」に焦点をあてながら、異彩を放っているように見える。

もちろん、近藤麻理恵は「片づけ」のスペシャリストでありコンサルタントであるから、彼女の周りの人びとが取り組んでいる「片づけ」の経験(片づけだけでなく、片づけを通じた内面の変化)をベースに語っている。

それにしても、その「異彩」な文章とそこに託されたメッセージに、ぼくは惹かれる。語られていることが「新しい」わけでもないし、すごく「特異」ということもないのだけれども、実際に目にしている周りの人びとの「変容」を念頭に、しかし、それと同時に、「未来がこうなってほしい」というコミットメントがこめられているからであり、さらに、このような文章とメッセージを、上に見たような他のタイトルが並ぶ「場」で開示しているからである。


近藤麻理恵が「予測する」(正確には、いろいろな人たちと一緒につくりだしている)世界については、ぼくも同じイメージをもっている。

留意しておくこととしては、日々ふつうに暮らし、メディア上のいろいろなニュースに圧倒されていたりすると、世界が「暗く」見えてしまったりして、「Greater shift toward mindfulness in the culture」がほんとうにおこるのかどうか、疑いの目を向けてしまうことである。

でも、この世界のいたるところで、外部のモノやコトに支配されるような価値感から<解き放たれる>人たちが出てきている(番組『Tidying Up With Marie Kondo』で、見事に家の片づけを成し遂げてゆく人たちからも、その一端を見ることができる)。

ただ家族と話をしたり、ただ友人と談笑したり、ただ陽光の中を歩くことに、なににも変えられない歓びを見出して、<幸福感受性>(見田宗介)を取り戻している人たちがいる。

2019年だけ、ということではないが、これから、このような<解放の連鎖反応>(見田宗介)が、時間をかけながら、この世界にひろがってゆく。

ぼくには、そのイメージがくっきりと見えている。