レストランのメニューの「英語訳」。- 香港で出会う「可笑しさ」。 / by Jun Nakajima

レストランのメニューの「英語訳」が結構むつかしいことを実感したのは、大学時代にアルバイトをしていたレストランバーであったと記憶している。

新宿駅のすぐ近くにあったそのレストランバーでアルバイトをしていたのだけれど、ときおり、英語スピーカーのお客様に料理の説明を英語でするように頼まれたりすることがあった。英語(だけ)はそれなりに勉強し、外国語の大学に通っていたぼくだったのだけれど、思うように説明できなかった。

そののちに、ニュージーランドに住みながら日本食レストランでアルバイトしていたときも、日本食とその料理の仕方を上手く説明できた記憶がない。

英語以前の問題(料理の知識不足など)もあるのだけれども、メニューや料理の仕方を「英語」にするのは、ぼくにとって、それほど容易ではなかったし、今もときおり困ることがあるものだ。


だから、人のことを笑うことができる立場でもない。でも、レストランで「可笑しい(おもしろい)」英語訳(ときには明らかに「間違っている」英語訳)に出会うと、笑ってしまうことがある。

ここ香港で出会った、レストランメニューの「可笑しい(おもしろい)英語訳」に、「fired」がある。中国語をみると、焼くとか炒めるといった意味だから、「fried」じゃないかと思って、同じメニューの他の英語訳を確認すると、やはり「fried」となっている。

「fired」の名詞は「fire(火)」であるし、動詞に一応「焼く」という意味もあるから(異なる文脈で)、100%間違っているとは言いきれないなぁ、意図的ということもありうるなぁと思いながら、しかし、やはり英訳ソフトの問題か、あるいは「fried」への変換ミスじゃないかとも思うのである。

それも一度だけの経験ではなく、異なるレストランで、いくどか「fired」に出会うのだから、考えさせられてしまうのである(また、「fired」には「解雇される」という意味合いもあるから、マネジメントや人事にかかわってきた身としても、複雑な思いもまじってくるのである)。

これはひとつの例であるけれど、レストランのメニューの英語訳をながめながらおもしろい訳に出会うのは、ぼくにとって、楽しみのひとつである。

こんな楽しみをもつことができるのは、漢字も英語も一応読むことができるからだろうと思う。漢字が読めず英語しかわからない人が、おかしい英語訳に直面したとき、なにがなんだかわからないだろう(それはそれで楽しいかもしれない)。

このような「楽しみ」も、翻訳ソフトや機能の向上などに伴い、いつかはなくなってしまうものかもしれない。