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Creativity

🎨 by Jun Nakajima

創り出すことのないところに芸術はない。しかし形を創るのではない。勿論 形を真似ることでもない。生きたものを産むのである。しかし、形ではない。
— 野口晴哉『碧巌ところどころ』
経済競争の脅迫から解放された人類は、アートと文学と思想と科学の限りなく自由な創造と、友情と愛と子どもたちとの交歓と自然との交感の限りなく豊饒な感動とを、追求し、展開し、享受しつづけるだろう。
— 見田宗介『現代社会はどこに向かうか』

 Creativity


創造。創造性。Creativity。


現代において、これらの言葉がどれだけ使われてきたであろうか。どこの方角に歩いていっても、ひとはこれらの言葉に出逢うことになります。それだけ、「時代」を反映している言葉なのです。でも、どれだけ語られようとも、それでも、ひとが生きる、ということにおける、本質的な言葉であると、ぼくはおもいます。

これだけいろいろな場面や情況で使われていると、「そんなことは知っているよ」という自明性の檻のなかにとじこめられてしまう可能性もあります。言葉の「意味」自体がむずかしいわけではなく、だれでも意味が「わかる」言葉であることから、「わかっている」という境界線をみずから引いて、じぶんを自明性の檻のなかにとじこめてしまいます。あるいは、特定の文脈(例えば、芸術や音楽など)にのみ紐づけて、じぶんにとっては「関係ない」という態度をとってしまうこともあるかもしれません。

それにしても、創造や創造性を語るとき、どこから、どのように語りますか?あるいは、「創造」とは何か、と問われるとき、どのように応えますか?

ぼくは、こんなことばから、「創造」ということを語りたいとおもいます。

 創られながら創ること。

見田宗介先生(社会学者)が、真木悠介の名のもとで鳥山敏子氏と対談していたときに、語った言葉で、この言葉がそのまま、この対談本のタイトルとなっています。

創るということは、創るということのまえに、「創られながら」という体験をしている、ということ。真木悠介先生は、フランスの思想家バタイユの芸術論に触れながら、この言葉をとりだしています。

 …バタイユを読んでいたら、ある仕事のいちばん最後が、こういうことばで…芸術論なんだけれども…終わってるんです。創造するということは、「越えられながら越えるという精神の運動なんだ」と。つまり、ほんとうの創造ということは、創るということよりまえに、創られながら創ることだと。

 ー『創られながら創ることー身体のドラマトゥルギー』真木悠介・鳥山敏子、太郎次郎社

バタイユのこの言葉を、真木悠介先生は、「近代的な芸術観への批判」として読みとっています。ここで語られる「近代的な芸術」とは、「個性の表現」だとか、「主体の表現」という仕方で作られる芸術です。いわば「個」が確固なるものとしてまずあり、「個人→芸術作品」という方向性で作られることが前提されています。このような「近代的な芸術」に対して、「ほんとうの創造」というものは、「個人」そのものが「創られる」という過程を経験しながら、作品を作りだしてゆくというわけです。そう、真木悠介先生はバタイユの芸術論を読みときながら、「創造ということ」の本質、さらには「生きること」の本質を、<創られながら創る>ということ、この「解体と生成」ということのなかに見てとっています。

創られながら創ること。この芸術観さらには人生観は、おどろくほどの射程と深さをもっていると、ぼくはかんがえます。第一に、「個人」とは何か、「じぶん」とは何か、という深い問いを突きつけてきます。それから第二に、「創る」という体験・経験(それらがどのようなものごとの創造であろうとも)の過程へのまなざしをいっそう深く投げかけてきます。さらに第三に、ぼくにとってのテーマのひとつ「じぶんの変容」ということへの洞察を与えてくれます。 

こうして、ぼくのテーマたちは、射程をひろげ、またテーマの本質へと深く深く降りたってゆくことになります。

「creativity」というテーマで追究してきたこと・追究してゆくことをメモ風(体系的ではなく、あくまでもメモ風)に記述しておきます。

  • 「創造・創造性」の本質。創られながら創ること。

  • 「創造・創造性」と現代社会。「創造・創造性」と組織。

  • 「創造・創造性」を培うこと、その方法。

  • アートと文学と思想と科学の創造。アートと文学と思想と科学の現在とゆくえ。

  • その他


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