JN_Blog_121.jpg

Disruption

Disrupting Thought, Feeling and Perception

🤳 by Jun Nakajima

自明性と神秘性(非合理性)とは、その存立の機制を問われないものの、同位対立的な表現に他ならない。<見る>ことのない者にとっては、世界は「自明」な自世界と、ナンセンスな異世界しかない。
— 真木悠介『気流の鳴る音』

Disruption


Disruption。ディスラプション。


混乱させること。中断させること。崩壊させること。日常においてこの言葉はむしろ「ネガティブ」に使われています。ただ、近年のゲームチェンジャーとしての技術などに向けて使われる「disruption」は、既存のものを肯定的に破壊するちからと、そこにひらかれる可能性へと注がれる言葉でもあります。ここで取りあげる「disruption」も、この肯定的なちからに向けられています。

移行期としての「現代」において、「ほんとうの歓びに充ちた生をきりひらいてゆく」ためには、これまで「自明」とされてきた考えや感情や世界観、さらには文化や生き方などを、その根柢において捉え返すことが決定的に大切になってくると、ぼくは考えています。ぼくたちは生まれてから、言葉を習い、人生観をとりいれ、生活の仕方をすみずみまで体得していきます。日々それらが積み重なり、個人の生のなかで、疑いようのない「世界」が構築されてゆきます。この「世界」は、まさに、「現実」として個々の生に繰り返し現れてくることになります。でも、例えば、「お金」というもの(こと)をひとつとってみても、お金ってなんだろう、と考え始めると、まるで「違った世界」が見えてくることがあります。マルクスの思想は、「商品・貨幣」の不思議な世界に深く降り立ってゆきます。

社会学者の真木悠介(見田宗介)は、<世界を止める>という表現で、「自明性の罠」から解き放たれる仕方の端緒を語っています。「世界を止める」なんてできるはずがない。そんな声もぼくたちの内奥からわきあがってきますが、ここでの「世界」とは、生まれてから教えられてきた世界で、ぼくたちが自明のものとして疑うことなく捉えている「世界」のことです(ひとは「世界の見方」を知らなければ、世界を「世界」として見ることができません。紙幣が「お金」だと教えられなければ「お金」だと認識することができず、紙幣を捨ててしまうかもしれません)。そのように教えられてきた諸々のものごとを、いったん「括弧に入れる」ことで、<世界を止める>わけです。そして、「世界を変える」には、<世界を止める>ことから一歩を踏み出さざるをえません。

「disruption」は、<世界を止める>ことを遂行しながら、同時に、自明のものとされていた考え方や世界観や人生観などを意図的に混乱させて、新しく創造的に構築してゆくことです。ぼくの6つのテーマのひとつである「創造性」ということが「解体と生成」ということであることを考えると、「disruption」は本質的に創造的な思考であり行為であることになります。また、既存の自明性を乗り越えてゆくということにおいて、それは「social pioneer」的な思考であり行為(あるいは非行為)ということにもなります。

「disruption」というテーマで追究してきたこと・追究してゆくことをメモ風(体系的ではなく、あくまでもメモ風)に記述しておきます。

  • <世界を止める>こと。真木悠介『気流の鳴る音』。「経済的判断停止」(マルクス)、「現象学的判断停止」(フッサール)、「人類学的判断停止」(レヴィー=ストロース)など。

  • 「自明性の罠」からの解放(見田宗介)。

  • トピックごとの「disruption」。「消費」「情報」「貨幣」「食」「健康」「病」「年齢」、等々。

  • 西野亮廣による「disruption」。

  • 「disruption」という方法と条件。

  • その他


 Blog on Disruption


Book, Articles, Podcast, etc.

Recommended Books

「disruption」というトピックへと、深く深くわけいってゆくための本です。
なお、書名をクリックすると、出版社あるいは著者関連のホームページへと飛びます。