Transformation

Individual / Organisational / Societal Transformation in Transitional Time & World.

🤳 by Jun Nakajima

私の臨床心理の仕事からいうと、一人の人間が変わるということは、ほんとうに大変なことなんです。
— 河合隼雄『こころの読書教室』
言葉によって世界を変えることはできない。暴力によって世界を変えることはできない。どうすればいいか。そのころまでに、わたしたちのつかんでいた方向は、こういうことだった。言葉ではない、暴力ではない、<生き方の魅力性>によって、人びとを解き放つこと、世界を解き放ってゆくのだということだった。
— 真木悠介「解説 劈くもの」、竹内敏晴『ことばが劈かれるとき』

Transformation


Transformation。変容。


個人、家族、グループ、組織、コミュニティ、社会等々の変容。

「変容」は、ぼくにとっての、切実な問いです。「切実な」というのは、つまり、生きられる問いだということでもあります。ぼくが生きてきたなかで、また生きているなかで、問わずにはいられない問いです。

「変容」という、誰でも知っている言葉ですが、この「変容」という言葉にたどりつくまでには、まるでビートルズの曲タイトルのように、「long and winding road」を通ってきました。

はじめにぼくのなかで明確に意識されたのは、「変わる/変える(change)」という言葉でした。ぼくの青年期はまさしく、この「変わる/変える(change)」というテーマを軸に、展開・転回してきたようなところがあります。

じぶんを変えたい。変わりたい。それは、ぼくにとっての切実な願いでした。

1980年代後半から1990年代前半に十代をかけぬけてきたぼくは言葉にできない「生きづらさ」を抱え、じぶんを失いつつありました。東京にある大学で中国語を学びはじめたことをきっかけに、1994年の夏のある日、ぼくは横浜からフェリーに乗って上海に向かうことにしました。三泊四日のフェリーの旅路を通過してたどりついた上海の風景は圧倒的でした。まさしく、突如、「異世界」に放りこまれたような衝撃でした。時間の流れもすっかり変わり、日本語の聞こえない不思議な空間に宙吊りにされたような感覚。この圧倒的な体験を起点にして、ぼくの「世界」、そして「じぶん」という経験が変わりつつありました。ようやくこの体験を「ことば化」できたのは、この旅から5年ほど経ったあとでした。その間にぼくはいくつもの「旅」をし、ニュージーランドで暮らし、見田宗介(社会学者)の本に出逢い、それから、生きる軸を国際協力の方向へと定めていきました。「旅で人は変われるか」。ぼくはこの問いを導きとして、当時の日本で生きてきた「じぶん」という経験をいくつもの旅の体験の鏡に映しながら、それまでに感じてきたこと、かんがえてきたことを「ことば」にしました(「断片集 旅」)。

じぶんを変えたい。ということを希求し、旅によって身体の細胞が変わるような鮮烈な体験を経て、ぼくの「じぶん」が構築されてゆくと同時に、ぼくの意識と関心はより広い「社会」へと向かっていきました。「社会」を、「世界」を変える。変えたい。ぼくは後進産業地域(南の国、途上国とも呼ばれる)の「開発・発展」を支援する国際協力を仕事とするべく、その方向へと生きることの舵をきりました。「開発学」を学ぶための大学院に進みました。コミュニティや国の開発・発展を学べば学ぶほどに、ぼくの関心は、そもそも「開発・発展」とは何だろうか、というラディカルな問いへと向けられてゆき、その切実な問いは、修士論文で追究することになりました(修士論文「開発と自由 アマルティア・センを導きの糸に」)。

「開発・発展(development)」を、個人の「自由」が拡大してゆく過程だとする、経済学者アマルティア・センの見方と実践(国連開発計画における「人間開発指数」)は魅力的です。ぼくはアマルティア・センの経済学と思想を追究し、じぶんの「立ち位置」を徐々に確かめながら、修士課程修了後、国際NGOでの仕事に就くことになりました。ささやかかもしれないけれど、ぼくにとっては、「世界を変える」実践のひとつでした。内戦後の、西アフリカ・シエラレオネにおける難民支援・帰還民支援、それから東ティモールでのコーヒー生産者支援に、ぼくはじぶんの心身をかけてコミットしました。なにごともそうであるように、うまくいったこともあれば、うまくいかなかったこともありますが、全身全霊でコミットした記憶を胸に、いくつかの事情も重なって、ぼくはいったん国際協力の最前線での仕事をあとにしました。

2007年、返還後十年を経た香港にぼくはいました。国際NGOでの経験がぼくに残した課題のひとつは「組織マネジメント」。そのキーワードを頼りに香港で仕事を探し、ぼくは人事労務コンサルタントの仕事(主に、香港でビジネス展開している日系企業の人事労務コンサルティング)に就きました。以前が非営利団体の活動であったのに対し、今度は営利企業の仕事でもありました。そして、会社のミッションには「個人と組織の成長と変革」が謳われており、ぼくは引き続き、「変わる/変える」「成長・発展」という問題系を切実に追い求めてゆくことになりました。この仕事に十年ほどコミットしましたが、その間、いわゆる外部環境(香港も世界も)はめまぐるしく変遷し、「景気・不景気」という言葉だけでは説明できない「地殻変動」とも言うべき環境変化を経験しました。

そのような時代のなか、ぼくはつぎに「個人」へといっそう焦点をあてたいとおもい、会社を辞めて独立することにしました。ホームページを立ち上げ、ブログを書き、研究し、仕事をする。これまでのじぶんの経験を振り返り、日々いろいろとかんがえているうちに、「変わる/変える」「成長・発展」という問題系のぜんたいを、よりニュートラルに、そして深く捉える言葉として、「変容(transformation)」という言葉に、ぼくはたどりつきました。「change」には、「変わる」という自動的な意味もありますが、どちらかというと、主体が「変える」という意味合い(主体が対象に働きかける意味合い)が前面に出てきます。また「成長(growth)」や「発展(development)」では、「段階論」(階段を登ってゆくイメージ)的な意味合いが前提されやすいことです。そんなことを考えながら、いろいろな本を読んでいるうちに、ぼくのなかで、「transformation」がしっくりとくるようになってきました。


「transformation。変容」というテーマで追究してきたこと・追究してゆくことをメモ風(体系的ではなく、あくまでもメモ風)に記述しておきます。

  • 「変わる/変える(change)」。じぶんを変える、じぶんが変わる。組織を変える、組織が変わる。社会が変わる、社会を変える。

  • 「成長・発展(development)」。個人の成長。組織の成長・発展。コミュニティの発展。社会の発展。「成長」とは何か、「発展」とは何か。

  • 「じぶん」とは何か、「人間」とは何か、「生命」とは何か。「社会」とは何か、社会の存立構造。自我の起原、社会の起原。

  • 「旅」することの可能性。旅をする人、世界の間を生きる人。生きることの「リアリティ」。移動と定住。根をもつことと翼をもつこと。

  • 「世界を変える/変えたい」という希求。「世界」とは何か。「世界を変える/変えたい」という希求の源泉。

  • 「中年の危機(mid-life crisis)」という契機。「人生の前半と後半」(ユング)。「物語」としての生(河合隼雄など)。

  • 「心のある道」(真木悠介『気流の鳴る音』)を歩くこと。コンサマトリー。マインドフルネス。

  • 「現代」という時代と「じぶん」。「軸の時代」(カール・ヤスパース、見田宗介)という見方。「現代社会はどこに向かうか」(見田宗介)。「虚構の時代」のゆくえ。

  • 「有限」の時代の思想と生き方。「無限」の時代から「有限」の時代へ。個人・家族・組織・コミュニティ・社会の変容。

  • 「組織」のあり方。組織のミッション・ビジョン。ティール組織。西野亮廣のビジネスモデル。

  • 「家族」の変遷・変容。家族のアイデンティティ。

  • 「コミュニティ」の変遷・変容。新しいコミュニティ、コミューン。情報通信技術とコミュニティ。

  • 論理と感情。

  • その他


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Recommended Books

「transformation」というトピックへと、深く深くわけいってゆくための本です。
なお、書名をクリックすると、出版社あるいは著者関連のホームページへと飛びます。

<じぶんの変容>

 

<集団・組織の変容>

 

<コミュニティ・社会の変容>